「開発者に訊きました:ゲームチャット」を公開しました。 「部室」をキーワードとした開発や、ゲームチャットで広がるゲームの楽しみ方、設定いらずで始められる手軽さの実現について、くわしいお話をお届けします。

https://www.nintendo.com/jp/interview/gamechat/index.html

sal Apr 03, 2025 · 1 min read
「開発者に訊きました:ゲームチャット」を公開しました。
「部室」をキーワードとした開発や、ゲームチャットで広がるゲームの楽しみ方、設定いらずで始められる手軽さの実現について、くわしいお話をお届けします。
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企画制作部の小野です。
Nintendo Switch 2 では、ゲーム機本体に始めから入っているソフトウェアである
本体機能全体のディレクターとして開発にかかわりました。

任天堂に入ってからは、ずっとハードの本体機能をつくっていて、
ニンテンドー3DSの「思い出きろく帳」で
プログラマーとして参加したのを最初に、
徳永さんとはずっと一緒に仕事をしています。

Nintendo Switchでは
本体機能のプログラムディレクターとして参加したりしましたが、
今回はさらに広い範囲を見ています。

ニンテンドーシステムズ※1の徳永です。
本体機能全体のテクニカルディレクターを担当しています。
本体機能を動かすために必要なシステムソフトおよびサーバーの開発全般を
取りまとめるポジションです。

私もニンテンドー3DSの頃から
ゲーム機のシステムソフト開発を担当しています。
小野さんとはずっと現場で一緒にものづくりをしてきていて、
今回はお互いにチームをまとめる立場になっていて、感慨深いですね。

技術開発部の田邨(たむら)です。
今回は本体につながる 『Nintendo Switch 2 カメラ』(別売)
開発にたずさわりました。
カメラをどういった仕様にするのが適切か、
ゲームチャットとセットでどうしたらよりよい体験ができるか、
検討しました。

これまでは、コントローラーや周辺機器の開発で
モーションIRカメラやHD振動の開発を担当したほか、
『リングフィット アドベンチャー』※2ではプロジェクトリーダー
をさせていただきました。

2020年頃、「次のハードの本体機能でどんなことができそうか?」を
考え始めたのがきっかけだと思います。
そのころはまだ次のハードがどのようなものになるか
わからない状態でしたけど、
「Switchの後継機になるものとして考えている」
ということだけは聞いていました。

そこに、「本体機能で特長になりそうな機能のアイデアはない?」って、
河本さん※3からお題が出まして。
チームでアイデア出しをしていく中で
「本体機能としてボイスチャットがあったほうがよい」
といった案が出てきました。

実は、河本さんからお題と同時に
「部室(ぶしつ)」というキーワードをもらっていました。
部室というのは、学校の部活動でみんなが集まってくる部屋のことですけど、
その部室に集まって、ゲームをやるだけに限らず
だらだらと過ごしているような雰囲気を出せたらいいんだけどね、
というような話でした。
そのイメージが、チームで考えていた本体機能としてのボイスチャットの案と
合致していたように思ったんです。

これまでの任天堂のゲームのオンラインプレイは
「同じゲームを遊ぶために集まろう」という感じで
みんなが目的をもって示し合わせて集まっていました。
でも、そうじゃなくて、まず「集まれる場所」があって、
そこに自然に人が集まって、同じゲームをやるもよし、
観戦するだけでもよしっていう空間があればなあって。

そうすればこれまでの任天堂のボイスチャットとは違う
チャットの世界をつくれるんじゃないかというのが
チームからの提案で。
それが「部室」のテーマにも合致するということで
試作してみることになったんです。

私たちの方でも、やっぱり次のゲーム機では
コミュニケーションの技術が
キーになるんじゃないかと思っていました。

しかも、こちらのチームでも
同じようなことを考えていた人たちが複数いて、
ある人はボイスチャットを研究していて、
ある人はゲーム映像の配信を、
ある人たちはマイクのノイズ除去を・・・と、
みんなが個別にさまざまな研究をしていました。

そんな時、ちょうど小野さんから
「コミュニケーションができる機能をつくれないだろうか」
という相談があって、
「実はこちらも同じような研究をしているんで、
一緒にデモをつくってみましょうか」
ということになったんです。

そこから最初のデモ完成まではとんとん拍子で組み上げていって、
割と早い段階で「これはいいものになる」という実感がありました。

同じような研究をしている、というのは本当に驚いた部分で(笑)。
それで、試作をつくることになったんですが、
当時はまだSwitch 2 は形すらなかったので、
研究自体は研究用にメモリーとCPUを増強したSwitch上でやっていました。
お互いに前もって研究を重ねていたこともあって、
試作はわずか半年くらいで完成しました。

ハードウェア開発チームとしても、以前から常に
カメラの最新技術を追いかけ続けていました。
そこに、「Switchの後継機種にコミュニケーション機能を設けるかも。
ボイスチャットだけでなくビデオチャットのニーズもありそうだ」
という話があり、
それに伴ってカメラの仕様を検討していくことになったんです。

先ほど「部室」っていうキーワードが出たんですけど、
大事なのは、その場の雰囲気をいかにうまく相手に伝えられるか
というところだと思いましたので、
カメラが重要な役割を担うんじゃないかと考えました。
なので、そこから本格的にカメラの仕様を検討し始めました。

私たちとしてはゲームチャットを
Nintendo Switch 2 にとって「大きな特長になる機能」と思って
開発していました。

そんな中、役員にもゲームチャットを体験してもらう機会があったんですが、
初めての方にもゲームをプレイしながら
ビデオチャットやゲーム画面の共有を
手軽に試してもらえているのが見られて、
手ごたえを感じました。

ただ、お互いのゲーム画面を共有して遊ぶことで
生まれる効果をもっと深掘りして十分に試してみないと、
これが本当にSwitch 2 の大きな特長になるか?というのは
確信がもてないと思っていました。

なので毎日2時間ぐらい、いろいろなゲームを
ゲームチャットで共有しながら遊んで、
どういうシーンで使えば楽しいのかという研究を
ずっと続けていましたね。

そのころはまだSwitchで試作していたので、
Switchの発売済みのゲームをゲームチャットと
組み合わせて遊んでいたんですけど、
『Baba Is You』※6っていうパズルゲームをあるメンバーが遊んでいたのを、
「それってどんなゲーム?」ってほかの人が注目し始めて。

すると、動画その人が「これはこういうルールで遊ぶゲームだよ」って
ゲーム画面を共有して教えてあげていたんです。

そしたら「そんな面白いパズルゲームあったんだ!」って。

次の日にはチームの全員が買ってましたね(笑)。
ゲーム画面の共有が活きるシーンが見つかった瞬間です。

例えば、友だち同士がそれぞれ別々にゼルダを自由に遊んでいたとします。
そこで一人が「この謎どうやって解くかわかんないよ」と言い出したら、
もう一人が「ちょっと、そこに行くから待ってて」と
動画ゲームの中の同じ場所に行って、画面を共有しながら
手本を見せることができるんです。


「そこに行くから待ってて」っていう言葉は、
オフラインのゲームを遊んでいるときは出ない言葉ですよね。
今までにあるゲームに「新しい価値」を外から加えることができるんだな、
っていうのをそのときにすごく感じましたね。

ゲームチャットを利用するには
Nintendo Switch Online※8への加入が必要ですが、
2026年3月末まではNintendo Switch Onlineに加入していなくても
ゲームチャットをお使いいただけます。

Nintendo Switch Onlineに加入していると、
ファミリーコンピュータ※9やスーパーファミコンなどのソフトも遊べますので、
ゲームチャットとクラシックゲームの組み合わせで
いろんな面白い遊び方ができるんじゃないかなと思います。

ゲームチャットがあることでゲームの楽しみ方の幅が広がることは
自分たちなりに実感することができたんですけど、
一方でこの機能を使うときの手軽さも大事だなと思いました。
ゲームをしている相手とボイスチャットやビデオチャットをするときって
機材とかを準備するのがちょっと面倒なイメージがありますよね。

でも、Switch 2 だと、本体にマイクがあるので
そのままボイスチャットができますし、
別売のカメラは複雑な設定が不要で簡単に使えるようにしました。

ハードの処理性能が上がって、
ネットワークの機材や環境も年々よくなっているので、
ようやくここまで簡単にできるようになったのかなと思います。

ゲームチャットがあることで、
初めてボイスチャットを使ってゲームをプレイした
というお客さまが増えるんじゃないかなと思っています。

友だちや家族と遊ぶときも余計な手続きなく、
すぐに遊べるように、ということにすごく気をつかいました。

わかりやすく使えるものでないと、
いずれ使っていただけなくなるだろうと思ったので。

でも、Cボタンは絶対あって正解だと思います。
チャットを始めたり、
カメラを起動したり、設定を調整したりというのが
Cボタンを押すことで直感的に操作できて本当にわかりやすいですし、
お客さまの体験も全然違うものになったと思います。