ただ、先ほど話していた「マリオ&ルイージRPGらしさ」をつかむのにかなり時間がかかったのでこの新しい要素の検証は後回しになっちゃって・・・。
どうすればこの漂流島の遊びを面白くできるだろうか、と検討を重ねているうちに任天堂さんに具体的に提示するのが遅くなってしまったし、その分、任天堂さんは不安だったと思います。
遊びとストーリーの方向性って開発序盤に短期間で決めて、そこから細かな部分を詰めていくんですけど、今回は想定以上に時間がかかってしまいました。
僕らはその間、船島が漂流する遊びの仕組みや、島のテーマや数などのボリューム感が確定しないままフィールドのアクションやバトルの内容を検討していて・・・それが結構雲をつかむようで大変でしたね。
両社のつくり方の違いというのも大きかったです。シリーズ過去作では、いつも遊びを最初につくってから、その遊びを活かせるようにストーリーのあらすじとなるプロットを考えていたので、すべての進行をディレクターがリードしていたんです。
でもアクワイアさんのつくり方はディレクターである大橋さんが島が漂流する遊びを考えて、それとは別に外部のシナリオ会社さんが同時にシナリオを考えている・・・というやり方でした。
でも、やっぱりRPGですから、お話と遊びがひとつにまとまっていないと先に進められないんですよね。
その同じくらいの時期に島が漂流する機能ができあがってきたんですよね。シナリオでも人と人を「つなぐ」っていう流れが見えてきて「つなぐ」ということがこのゲームのテーマとして確立されてきたというか。
島と島のフィールドどうしを物理的にくっつけるとなると、やっぱりシステムも、つくらなければならないデータも膨大になってしまうので、これは無理かもしれない・・・と思っているときでした。
それじゃあ紐か何かで間をつなぐのがいいんじゃないかと発想を変えて方向転換したんです。
そこで紐状でつなぐものって・・・という案出しをいろいろ行った中で「電源プラグをコンセントに挿したら紐状につながって、その中を電気が通って、何か良いことが起こる」というアイデアが出てきて。
「良いことが起きれば、人と人の絆きずなも生まれる」ということで、プラグをつなぐというアイデアがシステム面の困難をクリアにできるし、ストーリーにも使える。・・・私はこの発見が転機だったように思います。
「マリオ&ルイージRPG」は、遊びの内容とゲーム全体のテーマをシンプルに合わせて、小難しいゲームに見えないようにしています。それに、マリオのゲームでもあるので、ストーリーもわかりやすくなるように心がけています。
今回は漂流する船島とほかの島をくっつけるという遊びと、人と人をつなぐというストーリーで「つなぐ」とか「絆」といったところがテーマになってくる。
もちろん、それをプレイヤーにわかりやすく伝えていく方法の工夫っていうのはまた別に必要なんですけどね。
もともとこのシリーズはマリオとルイージの協力アクションが特長なんですけど、今作ではそれをより強化したいと思っていました。
これまでのシリーズ作では2人がセットになって行動していてAボタンとBボタンを押して、2人で一緒にジャンプしたりしていたんですが、今作では新しさを出すためにルイージは自律行動させています。オートでジャンプしてついてきてくれるので、遊びやすくなっていると思います。
さらに「どんなに離れていてもルイージはちゃんと協力してくれる」っていう遊びもフィールドの中に入れることにしました。それが今作の新しい要素動画「ルイージセンス」です。
近くにいても、遠くにいても、2人は協力してアクションしてるっていうのが表現されています。
マリオとルイージの協力感はこれまでよりも強調されていますね。バトルの通常攻撃もそうですし、フィールドでも2人だからこそできること、ということで動画ボールになったり、動画UFOになったり。
風変わりなアクションもあるんですけど、そういうのもすべて包み込めてしまうのがこのシリーズの特長で、2人の協力アクションのバリエーションによって攻略の幅も広がったと思います。
それが、意識してつくったものではないんです。というより、当時の僕たちはマリオ映画の情報を何も知らなくて。おそらく映画でも兄弟としての絆が描かれるだろうけれど、そこの描き方は気にしないで、あくまで「マリオ&ルイージRPG」としての表現をつくることに注力していこう、と思ってたら・・・
・・・まあ、オープニングはけっこう似てるって言われましたね(笑)。
そうですね。もちろん、映画をご覧になっていなくても十分楽しんでいただくことができるお話になっています。
「マリオ&ルイージRPG」シリーズは、今までどこかのんびりした雰囲気が漂うお話が多かったんですけど、今作のストーリーはややシリアスな内容になっています。とくに後半部分はマリオとルイージのヒーローらしさを感じていただけるのではないかと。
マリオっていうのは遊ばれるお客さまの分身なわけで。置かれている環境がシリアスで厳しい状況であれば、そこを脱したときの喜びもその分大きくなるんじゃないかなと。
だからこれまでのシリーズ作以上の兄弟の「絆」が表現できるのでは、と思ったんです。
あとは・・・やっぱりこれまでとは違ったものをつくって新しい体験、魅力を生み出したかったんですよね。
そうですね。マリオとルイージ、つまりお客さまが遊んだ結果として船島がにぎやかになっていく、住民が喜んでくれる、というフィードバックを返したかったんです。
つなげた島でつながった人たちの後押しがあって困難を乗り越えることができた、っていう体験があるといいなと思ったんです。誰かに支えられている喜びや、みんなで支えあうような絆も感じてもらえたらなって。
今回、サブタイトルが「ブラザーシップ」なんですけど、これはアクワイアさんとお互いに名前の候補を出し合って、100以上も出したアイデアの中から選んだもので。本作のテーマにぴったりな案が出たと感じます。
兄弟の絆、を意味しているんですけど、いろんな島をつなぐ船島の「船(シップ)」にもかけているんです。
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